「兄さん?兄さんってば!」
「……………」
エドワードは今日も、ガタンゴトンとゆれる車内で、窓枠に頬杖をし 空を眺めていた。
切れてしまった赤い糸
「兄さん、聞いてる?」
「…へ?あ、ごめん、まじめに聞いてなかった」
「真面目に聞いてよ…。そろそろ降りるからね、そのまま寝ないでよ!」
「あぁ、わーってるよ」
曖昧な返事をアルフォンスに返すと、再び空に目線を戻す。
現在 エドワード20歳、アルフォンス精神年齢19歳(外見は15歳)。
ノーアをフリッツのもとに預けると、2人はウラニウム爆弾を探し始めた。
賢者の石を探していた頃のような日々が2年続いていた。
汽車が主な移動手段の旅の中でエドワードについたクセ。
「…兄さん、なんで空をいつも見てるの? なんにもないのに…」
「……瞳の色」
「瞳の色?青い瞳ってハイデリヒさ………あ」
アルフォンスの脳裏をかすめたのは、金髪のポニーテールの似合う少女。
「笑顔は晴れ、曇りは落ち込んでる。降り止まない雨は涙で、暑い日は怒られてるカンジ」
「ぷっははは」
「どこまで行っても頭の上にいるのに…絶対に手も、声も届かない。
アイツそのものを見てるみたいでさ。……雨が降ってくるぞ」
「え?なんでわかるの?」
「単純明快。…肩が痛いから」
オートメイルの手術部分は、ちょっとした気圧の変化で痛みが出てくる。
ポツ ポツ 少し泣きじゃくってから。 ドザーッ と一気に泣き出す。
「ほぉ…ウィンリィだねぇ………」
「だろ?」
「ここの配線はこっちよ。あっ、そっちのほうにくっつかないようにね!」
オートメイル技師の聖地、ラッシュバレー。
その地で最近有名な少女は、オートメイルについてずば抜けた知識を持ち、
技師を目指す人に作り方を教えたり、装備者にメンテナンスの方法を教えたりしていた。
「ねぇねぇ、ウィンリィおねえちゃん! 今日もお仕事してるの?」
「そういうティスは今日も家を抜け出してきたわね?」
ウィンリィの足元にいる少女は目を爛々と輝かせながら続ける。
「だっておねぇちゃんのお話聞くの楽しいんだもん! 聞かせてよ!」
「ちょっと待ってなさい!あッ、ちょっとキミー!そこは……」
Important Human工房(略してIH工房)は、今日も大騒ぎである。
1時間後。昼食になってやっと、落ち着ける時間…とウィンリィが思ったのもつかの間。
「おねぇちゃん!お話してくれるって約束でしょ〜!」
「あああ〜〜〜〜〜っ。疲れてるのにぃ…」
ティスは腕を引っ張り、足は疲れのせいで動かない状況で、涙を流さずに泣くしかなかった。
「もう…話すことはないわよ? アイツのことなんか…」
「まだあるじゃない! ウィンリィおねえちゃん、居場所を言ったことないでしょ?」
「……居場所…ね。そうね…別の世界に…雲の上の世界に行ってしまったのよ」
「雲の上ー? まっさかぁ〜!」
「ホントよー? 虹をわたって行っちゃったんだから!」
それぞれの世界に別れてしまってから2年。
エドワードはまた旅を始め、ウィンリィは技師として独立していた。
「兄さん!兄さんってば!寝ないでって言ったのに…起きてよ兄さん!大変なんだ!」
「んぁ〜? なんだよアルうるせぇ…」
「はやくっ! 早く起きてッ! 窓! 窓の外! 見てよ兄さんってばぁ!」
「うっるさいなぁ〜、外がなんだっ…て………」
汽車はいつものように揺れている。ガタンゴトンと。 しかし、窓の外にある景色は違う。
「ここは…どこだよ………?」
「セントラルだ…兄さん、アメストリスのセントラルだよ!」
「んなこたぁ見りゃわかるんだよ! なんで…こんな……セントラルなんかに…」
「はっ……鋼…の?」
兄弟の目の前には眼帯をしているロイ。肩章の星と線の数が増えている。
「大佐!ウィンリィ!ウィンリィはどこだ!」
「まっ、待て二人とも!ワケを話せ!」
「いいからとっととウィンリィの居場所を言え! そのあとでアルが説明すッから!」
「う、ウィンリィ嬢はラッシュバレーで工房を……」
じーっと切符を切符を見つめていたエドワードは チッ を舌打ちをすると、
窓から無謀にも飛び出していった。
「っとぉ!オートメイルでよかったぁ〜っ!」
遠くなっていくエドワードの声。その声にロイは呆れていた。
「ま、窓から……アイツは成長していないのか?」
「大佐…駅までこの電車ではいけないんですよ…僕らは」
「どういう意味かね?」
「切符…見てみてください」
―ミュンヘン発 ベルリン行―
「あぁ、雨が降ってきちゃうわね…ティス、そろそろ帰ったほうがいいわよ?」
「平気だもーん、どーせ家に帰ったって誰もいないもん…」
「でも………」
「…それに、もう降ってきちゃったよ、雨」
「うっ。…しょうがない、午後は休業ねー」
「じゃぁ!おはなししてよ!」
ティスの目の中にキラキラ星が5個ほど飛び交う。
「…やっぱり通常営業してようかしら?」
「ね〜ぇ〜、はぁ〜やぁ〜くぅ〜おぉ〜はぁ〜なぁ〜しぃ〜しぃ〜てぇ〜よぉ〜っ!」
「あぁ もうっ! ティス!あたしまだお昼ゴハン マトモに食べてないのよっ?」
「…おねえちゃん…なんか男の人が傘差さないで走ってくるよ?」
外を呆然と見つめながらウィンリィに報告をするティス。
「は? あーもうドコの馬鹿かしらね、まるでエドみた…い……?」
今度はウィンリィが口をあけて唖然とする番だった。
ガタン と立ち上がり、咄嗟に傘を手に取り駆け出して行った。
雨の日の午後。 いつも賑やかな露天街は静まり返り、人の往来も少ない。
「エドーッ!」
「あ…ウィンリィ!」
二人ともお互いを確認するとその場で立ち止まる。距離間は50mほど。
「…本当に、エド?」
「正真正銘の、エドワード・エルリックだ」
「帰ってきたの?」
「あぁ。さっき突然。」
「………………」
「……ただいま」
「……おかえり」
とてとて こつこつ しとしと 雨のせいでよく見えない二つの人影。
ぽすっ と背の高い影に華奢な影が抱きよせられる。
切れた赤い糸の両端が 結びなおされたみたいに
終わり
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
や、やっとおわった…!いつもの1.5倍くらいある長〜いなが〜いエドウィン物。
結婚式まで発展させちゃうプランもあったんですけど、私的には「幼馴染以上夫婦未満」が好きなので却下。
「赤い糸」っていう表現をどうしても使いたかったのでございますよ。調子に乗ってタイトルにまで^^;
あとヒュグレとリンランが残ってますが…コッチにも精一杯の愛情を注ぎ込みたいと思います。
最後の一文はもじたぐ様で作らせて頂きました。
2006年11月6日 UP
|