49番 触れられない エド→ウィン
「ほらっ、エド右!電柱にぶつかるわよ!」
「え!マジで?!」
何故か今、
オレは視聴覚障害者体験なんてもんをやっている。
目隠しして、耳栓して、
なんにも見えない、なんにも聞こえない体験だ。
ウィンリィが右腕を引いて。
なんでこんなもんにオレが参加しなきゃならないんだ?
全部あの大佐のせいだ。畜生。
「ほら右だってば!」
「まだ右かよ!」
「まだってほとんど動いてないでしょ?!」
「はぁ?!かなり動いたんじゃねぇ?」
そんな感じで、何とか終わった。
かなりかかった。
でも、そんなことはどうでも良かった。
アイツは右手を引いていた。
でも、なんにも感じなかった。
ただ、引っ張られているだけ。
体温も、やわらかさも、なんにも感じない。
それが、怖いくらい実感できて。
アルの気持ちも体感した気分だった。
なにも感じない。
なにも伝わってこない。
それはある種、触れていないに等しかった。
この右手は、なんにも触れていない。
なんにも感じない。
そんな腕で、アイツに触れていいんだろうか?
なんにも感じない。
だから、力加減がよくわからない部分もある。
事実、手を握って「痛い」と言われたこともあった。
―怖くて、なんにも触れられない―
そう思うと、無性に情けなくなった。
アイツは感じているんだろう。
でもオレは、なんにも感じていない。
触れてない。
「痛くなかったか?」
「なにが?」
「さっき手、握ってただろ。」
「…………ちょっと痛かったかな。」
「やっぱりなぁ………。」
「?」
「あんまり感覚がつかめなくってさ。」
「別にだいじょぶだよ?」
「そう……か?」
「耐えられるし、相手はエドだし。」
耐えられるし、か。
「別にいたかったら痛いって言えよな。」
「へーきへーき!たいして痛くないし!」
「ほんっとに、痛かったら言えよ!?」
「分かったわかった。たぶん言わないと思うけどねー。」
「お前なぁ、こっちは心配して言ってんのにさぁ。」
「大丈夫だって!あんたの痛みに比べたらどってことないし。」
「…………オレのと比べるわけ。」
「比べるわけ。」
「…………だぁ〜。」
その性格のおかげで、
少し気が楽になった。
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自分のSSを自慢できない自分が時々無性に悲しくなります。
「視聴覚障害者体験」って私が小3の時に体験したやつです。
とにかくエドとウィンリィが手をつなぐシーンが必要だったんですよぉ!
2006年3月14日 UP