92番 キス    ウィン→エド

「………………どうしたのよ?」
「あ?………………あぁ。まぁな。賢者の石の情報が無くってさ。」
「……大変だね。」
床に座り込んで本を読むエドに、
いすに座ったあたしが訊く。
今、昨日からエドがリゼンブールに(かえ)ってきている。
珍しく、機械鎧(オートメイル)点検に。
半年以上会ってなかったから、元気そうなのを見て安心した。
ばっちゃんは出張整備に行って、
アルは中央(セントラル)でマスタング大佐の手伝いだとか。

今、この家には、あたしたちだけ。

「……………ねぇ、エド。」
あ?」
「………………なんでもない。」
「?‥‥お前、変じゃねぇ?」
「あっ、あたしは、べ、べつにっ。」
あたしは、ただ、あんたが心配なだけで………。

「……………った。」
「え?」
「わかったよ。」
「なにが?」
「おまえ、オレに構ってほしいのか?」
「はぁっ?!」
違うっつったら、嘘にならないこともないけど………。
「ふぅっ。素直に言えよ。」
と、立ち上がってあたしに近寄ってくる。
「………お前が思ってること、(わか)らないぐらいバカじゃないんだぜ。」
と、ひとことポソリと言い、あたしの(あご)に手をそっと添え。
あたしの口に、エドが口を重ねる。
ほんの数秒だったのか、それともすっごく長かったのか。
エドの口が離れたとき、言った一言に、
あたしは、つい涙を流して、エドに抱きついて。

―大好きだよ―

その一言だけで、あたしは帰りを待っていられる。
そんなあたしを、泣きやむまで。
しっかり抱いて、いてくれた―。


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はい、変なエドウィン一丁あがりっ!
TOPで募集していた挿絵協力者、まだ募集してます!
1人で描いてもらうのには負担がかかると思うので。
今回の挿絵を描いていただいたのは福瀬奈菜様です!
めっちゃ感謝です!

2006年1月2日 UP