「雨…やまないわねぇ…」
「ったく、足止めくらってたまったもんじゃねーッつの!」
「汽車が止まったのがリゼンブールの近くでよかったよね、兄さん…」

アナタがいれば。

集中豪雨―。エドとアルの師匠さんがリゼンブールに立ち寄って以来の雨量。
もうスグ、その記録を上回るだろう。とにかく激しい雨が降り続いていた。
ぐしょぐしょの状態でウチに避難してきたこの兄弟は、雨で汽車が止まってしまったという。
…一駅分をコートと廃材の鉄パイプで練成した傘一本で歩いてきたというのだ。
相変わらず無茶をする奴ら。少しは止まることも考えればいいのに…。
「思ってみたよりも、すげぇなこれは…」
「うん。一昨日からずっとこんなカンジ。大人たちはてんてこ舞いよ」
「……ちょっくら川の様子でも見に行ってみっか」
「そうだね、なにかできることがあれば…。あ、でももし堤防が決壊したら…」
血印は一発で消滅。そんなアルをエドは連れて行くわけもなく、様子を見に行った。
ばっちゃんの制止も聞かないで、ヒトリで雨の中を。

「…やっぱり、あたしも行ってこようかな?」
「何言ってるんだよウィンリィ!行ったら兄さん、きっと怒るよ?」
「わかってるけど…誰かいないとアイツ、絶対に無理すると思わない?」
「そ、それはそうだけど……」
「ま、鋼の錬金術師さんならどうにかするでしょ!ばっちゃん、行ってくるねーッ」
エドのときよりも激しい制止をどうにか振り切ったあたしは、レイン川の土手へ走った。
「ええっと、どこで作業してるのかな…………あ」
ピカー と激しい光。雷じゃなくて…そう、『練成反応』とかいうヤツ。便利だなぁー錬金術。
「あそこにいるのね」
川の下流から補強を進めているらしかった。…それもそのはず、上流は3日かけて
村の男の人たち総出で土嚢を積んで、それなりの補強は施されていた。
…もっとも、その補強が練成と比べて弱いのはわかりきったこと。
でも、30%でも補強が施されている場所と全然補強のないところだったら。優先は後者。
「まったく、師匠の真似事をやってるつもりかしら?まぁ、村としてはありがたいケド…」
練成反応の発生源に近づくにつれて、歓声が聞こえ始めた。
「おぉー!流石はエドワードだ!」 「もう師匠に肩を並べたのか!」 他多数。
「結構やってるみたいぃっ?」
声が裏返ると当時に、あたしの目の前の世界は180度回転した。
何が起きたのかよくわからなかったけど、5秒後に理解した。
…………川に、落っこちたんだ。
結構泳ぎは得意だったつもりなんだけどなぁ……濁流の中では思うように泳げない。
ウソっ、ちょっと………ヤバくない?

「……い、オイ!大丈夫か、ウィンリィ!?」
「う…ん…、あれ、エ…ド?」
気が付くと、あたしは自分のベットの上にいた。…川に落ちたんじゃなかったっけ?
起き上がると同時にかる〜くクラりとした。さらに同時に横からエドの罵声。
「ったく、何でお前が流れて来るんだよ!」
「……エドが助けてくれたの?」
「オートメイル重くて泳げねーから、お前抱きかかえてロープで引っ張ってもらった。
大変だったぞ、結構。流れはきっついし、オートメイル重いし…お前も重いし
「あ、ありがと…」
「靴が最初に流れてきてな…人のこと言えねーじゃねーか、無茶しやがって!」
ううっ。イタいところをつかれたなぁ…。
「………ゴメンナサイ」
「いや、オレも悪かった。五月蝿く言っときゃよかったな」
「そんな!エドは悪くないよ!」
「そー思うんだったら来るんじゃねぇよバカ!」
「……エドがいるから…どうにかなるかなって思って…。ゴメン…」
「…………ふー。そーゆーコトは信じて疑わねーからな、お前は」
エドは椅子から立ち上がってベットの縁に座る。
「…無事でよかった」
そういって、しっかりと抱いてくれた―

翌日。エドの補強のおかげで川が氾濫することもなく、集中豪雨は終わりを迎えた。
汽車の運行が再開されてスグ、幼馴染は旅立って行った。

オートメイルがさびたと訪ねてきた幼馴染に、
スパナを投げまくるまで、あと2週間―

終わり
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タイトルの意味、わかってくれますよね! 「エドがいれば大丈夫」だと思ったわけですよ!
ウィンリィ応援期間限定祭り「She's So Sweet」に(恐れ多くも)投稿した作品です。
アップすっかり忘れてたんですが…いやはや。(祭りは11月15日に終了してます
誰か読んでくれた人いるんでしょうかね…いなくても自己満足なので気にしませんがw
次の「Bitter Sweet」にも応募済み(エントリー制だそうです)。投稿許可おりるといいなぁ。

2006年12月5日 UP