「ハァ、はぁ、ハァ………。」 足下は血の海。なにもない真っ暗な空間。 ここは、たぶんグラトニーの腹の中。 血の沼 エド視点 13巻ネタ単独 光もなく、音もない。何にもないような、でも、確かにココには覚えのある、 …………なんとも、奇妙な場所だ。 さっきから、何時間歩いたんだろうか……。 なにも………見えてこない。 「くっそ………あのバカ皇子……。」 リンを責めたって何にもならない。よくわかってる。 オレだって、目の前に突然 自分の大切な人が現れたら、 アイツと同じようにためらっただろう。よくわかる。 それでもバカ皇子のことをののしりながら歩き続けた。 何時間も、何時間も。 そうでもしてないと気が狂いそうだった―といえばそうなのかもしれない。 それでも、いっこうに光は見えない。 「………まるで……。」 そう、まるであの頃のように。 大佐が来るまで、目に光をやどさずに、ずっと沈んでいたあの頃―。 光も希望も、そして家族も。すべて奪われた環境の中で、 暗闇の中を―出口など無い迷宮を、ずっとさまよい続けた。 「アルー!グラトニー!…バカ皇子ー!」 「バカとはなんだバカとハ。」 「お?」 リンの顔よりも先に、視界に入ってきたもの。 それは、松明の光。 『光…………!』 「リン!」 「一国の皇子に向かってなんたる言いぐさダ。」 あの日から、オレの目には光が宿った。 自分でもよくわかる。 大佐がウィンリィの家に来たあの日、国家錬金術師にならないかと言われたあの日。 そうだ、決めたんだ。前に進むって。アルを元に戻すって。 『出口が無ければ、作るまで』 …確か、随分前にそんなことを言った気がする。 今、オレは迷宮の出口を力ずくで作っているのかもしれない。 「前向きっつーか生きることにねちっこいだけだ。 ちょっとでもあきらめたらアルの鉄拳と怒号が飛んでくるからな。」 そう、諦めるなんてしたら、それこそ自分から、迷宮にはまり込むことだ。 血の沼に、永久に閉じ込められて、一生 彷徨い続けるしかない。 オレには、やらなきゃいけないことがたくさんあるから。 絶対に、迷宮の壁をぶっ壊さなきゃいけない。 ……それが、オレに科せられた試練― 終わり -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- はー、かなり遅れたのですが、13巻ネタです。いやぁ、ランファンネタがつぶされた勢いでね…^^; うん、 整理してたら埋もれてたのを発掘しました。ほかにもいろいろ。 今回からテーブルを利用した中央表示にしてみました、いかがでしょう? 解像度800×600の方でも横バー出ることなく表示される…ハズ。不具合ありましたらご一報ください。 2006年8月2日 UP |