Pain of Alchemist. 1章 ― 健気な笑顔 ―

「まったく、なんでアンタは自己メンテ サボるのっ?!だから動作不良になるんじゃない!」
スパナを右手に構え、エドワードにせまるウィンリィ。
「いや、最近忙しくて、そんな暇がなくて…なぁアル!」
「ええぇっ?!あ、うん、そうなんだよウィンリィ!」
「嘘つくのが下手よ アル。エドはいつ詐欺を起こすやら…。」
兄弟の連係プレーは恐怖のあまりかみ合っていないようだ。
「ご…ごめんなさい。」
「………まぁ、ちょっと故障している部品もあるみたいだし?
 今回は許してあげるけど…ちゃんとメンテしておいてよね!」
「はいっ!気をつけます。」

リゼンブール村。まるで某ゲームの王国のような あきれるほど平和な村。
近くに来たついでにオートメイルの調子を見てもらおうとよったロックベル家で、
エドワードのメンテナンス不備が発覚。
「次 もしサビでも見つかったらもう直してあげないからね!」
「ウィンリィ、その台詞 ボク50回ぐらい聞いた気がす「気のせいよ!」
実際、エドワードが壊すたびに言っているのだが、実行したためしはない。
「で?旅はどう?」
「最近は有力な情報なくてな。全部ガセかまがい物。」
「ふーん。」
「実はね、この前にもリゼンブールに寄ったんだよ。」
「えぇ?!なんで来なかったのよー!」
「母さんの墓参りに寄っただけだったからな。っつか お前留守だったぞ。」
「留守…あぁ、出張に行ってた時ね。あの時は工具の買出しにも行ったし…。」
「工具?」
「そう!すごく使いやすいのを見つけたのよー!それも低価格!」
満面の笑みで自慢の工具を語る。
「やっとウィンリィ笑ったね、兄さん。」
「あぁ。」
「でね、この辺が普通のとは違って…。」
兄弟の会話などさっぱり耳に入っていない様子。
小さいころから一緒に笑って、泣いた幼馴染。
ウィンリィの笑顔は兄弟の支えであり、原動力なのである。

コンコン   ドアをノックする音。
「おーい、エドー。」
「あれ、ブレダ少尉?」
ドアの向こうからするブレダの声に多少の疑問を抱きながら、ドアを開ける。
「よう、久しぶりだな。マスタング大佐がお呼びだ。」
「大佐が?ていうかなんでブレダ少尉?電話は?」
「おれはこっちで仕事を言いつけられてるからな。
 お前は彼女をつれてイーストシティまで行くんだ。」
「ウィンリィを?え、アルは?」
「アルにはココに残ってもらう。早くしたほうがいい。」

さっぱり要領を得ないブレダ少尉の説明に首をひねるエドワード。
結局、意味もわからずに、エドワードとウィンリィの二人はイーストシティへと(おもむ)くのだった。


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2006年9月9日 UP