偽りの愛情 第2章 ―(ウワサ)

「おはよう、ウィンリィ!」
教室に入ったとたんに声が飛ぶ。
「あ、おはよう、アリス。」
「どしたの?なんかいいことあった?」
「え?」
つい、声が裏返る。
「やっぱり、なんかいいことあったでしょ?」
「実はさ、昨日彼氏ができたんだっ。」
「おぉっ!ついにウィンリィも仲間ねっ!…で、お相手は?」
「Bのエドワードく「エドワード君?!」
「う、うん。」
「ちょっとちょっと!あのエドワード君?ちょっとー、大変じゃない!」
「なにが?」
「なにが?って、あんたねぇ、エドワード君今年のバレンタイン
 チョコレート50個はもらったのよ?それだけ人気があるのに……。」
「うん、大丈夫。…………だと思う。」
「ま、がんばりなさいよ!応援してるからw」
「うん、ありがとう。」

休み時間。どこからともなく噂は広まった。
「ウィンリィちゃん、エドワード君って素顔はどんなの?」
「ねぇねぇ、エドワード君って好きな食べ物とかある?」
「いや、昨日つきあい始めたばかりだし……。」
まわりから一気に質問される。
場所は変わってB組。アランがエドワードにつめ寄る。
「おいエドワード!訊いたぜ、ウィンリィちゃんと付き合ってるんだって?」
 いいよなー、オレの(あこが)れだったんだぜー?」
「はは、あきらめな。もっと似合うやつがいるって!」
「そうかぁ?(めぐ)り会えればいいけどなぁ。」
噂は先輩階層まで広まる。“エドワード君の彼氏”というだけで
学校じゅうの有名人になってしまうのは、エドワードにそれだけ人気があるからだろう。
としてトドメ。帰りのホームルーム終了後のこと。
C組の入り口に現れたのはエドワード。
「おいウィンリィ!一緒に帰ろーぜー。」
「キャー!ほらウィンリィ、お迎えだよー!」
「ほら、早く帰ろうぜー。」
「はいはい、ちょっと待っててー。」

「お待たせー。もう、わざわざ来なくても……!」
「だってあれだけうわさが広まったんだぜ?できるだけマジに見えるようにしねーと。」
「た、確かにそうだけど………。」
とりあえずまわりからはふつうのカップルに見えるように、
できるだけ昨日のことがバレないように、と努力しながら帰る。
ふと、気になった疑問をぶつけてみる。
「エドワード、その、昨日のネコ……どうしたの?」
「あぁ、死体(あれ)か?てきとーに()めといたぜ。」
「見つかんないように?」
「当たり前だろ。」
「よかったぁー。」
心からホッとする。
「そうそう、今日さ、オレんちによってかねぇ?」
「え?」
「昨日お前ンちの場所覚えたし、今日はオレんち覚えとけよ。」
「んー、まぁ、いいけど。」
「よし、じゃぁこっちな。」

「…ここ ここ。オレんち。」
「……………………。」
「どしたよ?アゴでもはずれたか?」
口をあんぐり開けたまま、突っ立っている私に問いかける。
目の前にあるのはまさに豪邸。そういえばお金持ちだっけ、コイツ。
「ほら、早く入れよ。」
玄関を開けて手招きをする。
「お、お邪魔しまーす…。」
 と、声が響くほど大きい玄関エントランス。
ステンドグラスから注ぐ色とりどりの光。
「……アンタ、いい環境で育ったわねぇ……。」
「そうかぁ?広すぎて逆に出歩く気が無くなるぜ?」
階段を上って、上って。やっとたどり着いたのはエドワードの部屋。
部屋はまたすごく、私の部屋とは180度違った。
「なんか、住んでる世界が違うみたいなんですけど。」
「そんなことねーって。オレはウィンリィんちみたいな方がいいけど。」
「それもこの環境だからいえることよ。」

ゆっくりとくつろがせてもらった後、私は家へと帰った。
今日忘れていったケータイを見ると、アリスからのメールがあった。
タイトル:どうだった?
やっほーwんで、エドワード君との下校はどうだった?
あー、もうラブラブなふたりが目に浮かぶわよ〜w
ハハハ、と苦笑しながら返事を書く。
事実上、本当に好きなのではないのだから。

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スミマセン、ケータイ持ってないので表示よくわかりません^^;
2006年3月31日 UP