偽りの愛情 第3章 ―先輩―

なんだかんだで一週間。周りにはまだ、誰も疑う人はいない。
頑張って本物のカップルに見えるよう、努力してきたからだ(…と思う)。
「ウィンリィちゃん!」
「はい、……あれ、サルーン先輩…。」
「訊いたよ、エドワード君とお付き合い、始めたんだって?」
「え、あ、まぁ、一応……。」
「そんなにテレること無いって!でさ、今度の文化祭のことなんだけど……。」
さすがは来年の生徒会長最有力候補。手際よく話が進んでいく。
「………そういうわけだから、今日の放課後に打ち合わせね。」
「はい、わかりました。」
「じゃ、もうひとっ走り伝達に行って来るから!」
「あ、あの、私もてつだ………」
手伝う、と言いかけたときにはもうかなりの距離。
運動神経がいいことでも、有名だった。

「ウィンリィ、お前帰んねーのか?」
「うん、文化祭の打ち合わせ。」
「大変ですねぇ、学級委員殿。」
「そう?やってみると楽しいわよ、意外と。」
「面倒くせーだけだろ。」

放課後。指定された教室に行くと、そこには先輩がいて、
私のあとに続いて学級委員と各委員会の委員長達が到着しだした。
「全員そろったかしら?………じゃぁ、始めるわよ。まず体育館壁面の飾り付けことですが、
 これは運動委員会に担当してもらいたいと思います。
 校庭の出店の整理は安全委員会。校内の清掃は清掃、美化委員会。チラシづくりは………」
どんどん決まっていく役割分担に異議を唱える者はおらず、
委員会に所属していない人はビラ配りや校内清掃担当になった。
終わった頃にはもう夕暮れ。両親には、遅くなると伝えてあった。
「打ち合わせ、おわったか?」
教室を出たところで声をかけてきたのはアイツだった。
「エ、エドワード? 待ってたの?」
「当たり前だろ?好きな人を待ってるほうが、本物っぽく見えるんじゃねぇの?」
確かに。それはそうかもしれない。
「……とりあえず、帰って寝たいわ。…疲れた。」
「じゃ、さっさと帰りますか。」

いつもの帰り道。私に異変が起きたのは、
自分の家とエドワードの家の分かれ道でのコトだった。
「じゃぁね、エドワード。」
「『じゃぁね』?……帰れないぜ、お前。」
「え? ……っ?!」
か、体が動かない……?
「そういうわけだ。 今日、お前は家に帰れない。行く場所は…どこだろうな。」
エドワードが歩き出した方向に、何故か私は歩き出す。
明らかにエドワードの家の方向ではない。その先に、何があるのか。
私は、知っていた。
ゼヴィアを仕切る、ケスナーの屋敷。
屋敷の前まで来ると、私の体は自由になった。
「なんで?! 私と、契約したじゃないっ!」
そう言った直後、背後から誰かに殴られて、私は気を失った。
薄れる意識のなかで聞いた声。それはエドワードの一言。

「……契約?…………さて、何のコトかな。」

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2006年4月4日 UP