偽りの愛情 第4章 ―真実―

目を開けると、私はイスに縛り付けられていた。
意外にも口はきけるようになっていた。
そして、目の前には大きな玉座に座った一人の男。
「ようこそ、わが屋敷へ。」
「………………………?」
「おや、私をご存じ無いと?では、自己紹介をしよう。
 私がサング。サング・ケスナーだ。よろしく。……まぁ、無意味ではあるがね。」
無意味。その本当の意味を、私は理解していた。
「感謝するよ、エドワード。……よくやってくれた。」
「ありがとうございます、ご主人。」

サングの横でひざまずいている少年。私はそいつにだまされた。
たぶん、ネコの世話係かなんかだったのだろう。
あそこにいたのも偶然じゃない。
「…最初から、だましてたのね。」
「あぁ。まんまとのってくれて、助かったぜ。」
「…………………。」
「さて。私がネコを好きなのは知っているだろう?」
「……えぇ。」
「なかでもお気に入りの「レアリズ」、実は、死んでしまってね。」
遠回しに攻めてくる、なかなか嫌なオヤジだ。
「まぁ、わかっているとは思うが。私は、ネコのためならどんな犠牲もいとわない。
 たとえ、人の命であったとしても、だ。…サルーンに言わせれば、オカシイそうだが。
 なぁ、サルーン。」
そう声をかけると、私の隣にサルーン先輩が歩みでてきた。
「お父様、やっぱりオカシイわ。たかがネコ一匹に、人を殺すなんて。」
「たかが……。お前から見れば、そうかもしれないな。しかし、私にとっては
 全てだったよ。お前は十分に成長し、もう手をかけることもなくなった。」
「…………………。」

「さてと。そろそろ時間だ。………実は君の座っているそのイス、電気イスでね。」
「!?」
「エドワードが持っているボタンを押せば、電流が流れる。
 そんなに強くはないが、連続して当たり続けていれば、威力はそれなり、だ。
 何か言い残すことはあるかね?」
「………ひとつ、聞きたいわ。…エドワードに。私に、何をしたの?」
「?」
「曲がり角で。私の意志と反した方向に勝手に体が動く。あの場にいたのは、あなただけ。」
「……ぷっ。」
ふきだしたのは、サングだった。
「きみは、エドワードが何者か、知らないのかね?」
「? 何者って、平凡な少年……。」
「違う。エドワードは、人間ではないのだよ。」
「え……?!」

「オレは、人間じゃない。堕天使(だてんし)だ。」
その声はいつものエドワードとは明らかに違う、
冷酷な冷たい声だった。

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2006年4月28日 UP