偽りの愛情 第5章 ―堕天使―

「ウソ!人間…でしょ?」
「だぁ〜かぁ〜ら、オレは人間じゃねえっつってんだろう?」
エドワードがそういうと、私の目の前に黒い羽が落ちてきた。
「………カラスの羽……、……じゃない…。」
おそるおそる、顔を上げてみる。すると。
目に映ったのは、背中から黒い(ツバサ)のはえたエドワード。まさに堕天使(アクマ)だった。
「これで信じるかい?」
「……………。」
「あぁ、ちなみにオレはキスした人間を操れるっていう力を持ってるから。」
そうか、そういうことだったのね。
まさに、悪魔の契約―。

「お別れはすんだかね?……ではエドワード、ボタンを押してくれたまえ。」
「了解しました。」
「い、イヤっ!エドワード!何でそんなヤツの言いなりになってるのっ?!」
笑みを浮かべながら、ポケットからスイッチを取り出す。そして、ボタンを押す。
でも、私には、何の変化もない。
「……おい、エドワード。ボタン、押したのか?」
「押しましたよ。」
「キミ、何か感じるかね?」
「いえ、何も。」
…………………………。
「……お父様、「電気イス」という代物は、電気がないと意味がないのですよ。」
「そんなことは分かっている。それがどうしたと…………。」
みんなの視線が一気に一点に集まる。
イスからでているコンセントの先。その先は空気。電気など、流れていなかった。
「さ、サルーン!お前、コイツをかばうのか?!」
「当たり前じゃないですか。私の大切な後輩ですもの。」
隠していたナイフで、私の自由を奪っていたナイフを切る。
「エドワード!操って引き留め……!?」
隣にいたはずのエドワード。その姿は私に駆け寄っているところだった。
「大丈夫か、ウィンリィ?!」
「え、エドワード!?な、なんで?」
「ネコ一匹に人の命をかけるなんて、ただのバカさ。」
「お、お前まで裏切るのか?!」
「あー、裏切ってやるさ。なんの躊躇(ためら)いもなくね。さっ、逃げんぞ!」
いつの間にか消えている翼。私には、まだ信じられなかったけど、
一つだけ確かなことは、私を助けようとしてくれているということ。

「そろそろ、いろんな仕掛けが働き出す頃ね。」
「し、しかけ?」
「そう。侵入者をコテンパンにするためのね。」
「心配すんな。調べあげてあるから。」
などと言ってるそばから早速 弾丸がとんできた。
「堕天使をなめんなよっ!」
手を前に出すと、ブラックホールのような黒い球体に、弾が吸い込まれていった。
かわしたり、やっつけたりしながら先に進んでいく。

外にでた。そこにはまた、大勢の狙撃隊がいた。
全員が銃をかまえていた。ちょっとでも動いたら撃つ、と言わんばかりに。
「さてと、どうやって切り抜けるかねぇ。」
「残ってる逃げ道は、一つだけよ。」
「え?先輩、どこですか?」
「上。空よ。」
「えぇ?!」
「ココにいるのは堕天使だぜ?一応飛べるんだけど。」
………確かに、逃げ道なんて無い。
「……じゃぁ、お願いするわ。」
「よっしゃ、ちゃんとつかまってろよー。」
黒い翼をバサッと出し、私達をつかむ。
二人も持ち上がるのか、と思ったら意外にも速いスピードで上昇する。
気付けば、とっくに屋敷など見えなくなっていた。


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2006年7月19日 UP