魔術師 対 邪術師  第3話−閲覧許可−

エドワード達がたどり着いたのは、首都ファオンズ。
大都市であるファオンズの国立図書館になら何かあるかも、と考えたのだ。
「すんませーん!」
「はいはーい?どんな本を探してるんですか?」
「邪術についての本を探しているんですけど……。」
「邪術の本………あぁ、ごめんなさい。あるんだけど、邪術関連書は特別な許可がないと。」
「誰の許可が必要なんですか?」
「んー、軍の佐官(少佐〜)以上の人か、その他 政治関係の人ねぇ。」
「………そんなん知り合いにいねぇぞ……?」
「どうするの、兄さん?」
民主主義であるこの国では軍はさほど権力は持っていないものの、
やはり影響力は大きい。
まして、国の議員はその上をいくのだ。
それほど邪術は驚異となっているのだろう。
「………あのぅ。」
「? どしたのジャクリア?」
「もしかしたら……いるかもしれません。…大佐の知り合いが。」
「えぇ?!大佐って佐官の最上官じゃねぇか?!」
「その人、どこにいるの?!」
「たしかファオンズの隣 レンベンフッド、名前は…ロイ・マスタングさん……だったよなぁ…。」
「はっきりしないの?」
「えぇ、小さい頃に一回だけ会ってそれっきりだから……。」
「そうか………。まぁいいや。行ってみようぜ!」

レンベンフッド。
豊かな農村地でありながら一方では高層ビルの建ち並ぶ、農業と工業のうまく解け合った町。
そこに確かに、ロイ・マスタング大佐はいた。
タイミングよく有休を取っていて、会うことができた。
「マスタングさーん!」
「おや、ジャクリアちゃん?久しぶりだねぇ。……そっちは?」
「こっちは同じ村に住んでるエドワードさんとアルフォンスさんです。」
「じゃぁ、君たちが有名な“エルリック兄弟”?」
「まぁ、一応。」
「……それで、天才兄弟がなんのご用かね?」
「それが、お願いがあってきたんです。」
エドワード達は、今までの全部のことを話すと、邪術関連書の閲覧許可が欲しい、とロイに頼んだ。
少し考えた後にでたロイの答え。それは
「……いいだろう。」
「やった「ただし!…条件がある。」
「条件……?なんですか?」
「……私のだす課題魔術をクリアしなさい。全員が、だ。
 ……一応、そういう規則なのでな。」
「その課題魔術は?」
「………“アリシュフォール”。」
「アリシュフォールって、……封印魔法の?」
「それにたしか、………結構 高等じゃ?」
「あぁ、子供にとっては、な。大人にとってはどうってことないが?
 それに、邪術を操っているのが子供……とは考えにくい。」
「たしかに、それは一理あるけど……。」

とりあえずロイの家に泊めてもらうことにしたエドワード達一行は、
その夜 相談に明け暮れた。
「……どうするよ?…オレたち封印魔法得意じゃないんだぜ?」
「それに僕らはどうにかなるとして、ジャクリアの魔力は………。」
「アリシュフォール、かぁ………。私 使えるかなぁ……。」
ジャクリアの魔力はあまりたいしたことはない。
ジャクリアに限ったことではなく、女性の魔力は少ないことが多い。
ウェルチアのような爆発的な魔力を持った女性は、滅多にいないのだ。
それゆえ、少ない魔力で使える技の多い防御系魔術や補助系魔術が得意な女性が多い。
「あの野郎、それも見越して課題だしやがったなぁ!」
「まあまぁ兄さん落ち着いて!何とかしようよ!」
「そうですよ!準備期間 一週間もらったんだし!」
「………そうだな。ジャクリアの魔力を増やす方法を考えるかぁ……。」
「でも、魔力を増やすのってさ、結構大変だよね……。」
「《修行》つまきゃいけないんでしょ?」
「きつい修行になればなるほどに魔力は多く増えるけど、
 そんなきつい修行、ジャクリアできないし…。」
「でもちまちまやってたら一週間なんてあっというまだよ?」
「だぁぁー!どーすりゃいーんだー!」

「………さぁ、どうするかね?」
ドア越しに訊いていたロイは、ぼそりと言った。

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2006年2月3日 UP