魔術師 対 邪術師  第4話−課題魔術−

エドワード達がレンベンフッドに滞在しはじめて一週間。
ロイとの約束、「封印魔法“アリシュフォール”を全員が使えるようになる」の期限日だった。
エドワード達が指定された時間、場所に行くと、そこにはロイがいた。
「………準備はできたのかね?」
「あぁ!バッチリだ!」
「ほう。自信があるようだな。忘れるなよ、全員が、だぞ。」
「わかってます。絶対に全員使えます。」
「そうか。……では、見せてもらおう。エドワードからだ。
封印してもらうのは……そうだな、私の動きを……10秒ほど。」
“アリシュフォール”は封印する時間も指定できる。
エドワードは難なく使った。
元々の(うつわ)が並大抵のものではない、一週間できっちり体に覚え込ませてしまったのだろう。
続くアルフォンスも危なげなく合格。

「では……ジャクリア、君の番だ。」
「はいっ。」
………………………。
「“アリシュフォール”!」
ジャクリアが叫ぶとともに、ロイのまわりに光の陣が現れた。
封印魔法特有の 封印陣。
それが現れれば、もうほぼ成功したようなものだ。
ロイの動きはピタリ、と止まった。
10秒きっかり過ぎると、元に戻った。
「どうですか、大佐?」
「………正直、驚いたな。ジャクリアがここまで使えるようになるとは。」
「ま、裏技、使ったしな。」
「裏技?」
「えぇ。大佐も()いたことあるでしょう?補助系魔法の“ケイフェース”。」
「あぁ・・。」
“ケイフェース”。自分の魔力を相手に分け与える魔法。
分け与えた魔力は永久に相手のものとなる。
しかしその分、自分の魔力を削ることが多いので、滅多に使われることはない。
「今回はオレの魔力を分けたのさ。」
「……なるほど、そういうことか。」
「人の力に頼ったんでは、ダメだったでしょうか?」
「いや、むしろ協力し合う、という点でも合格だ。
 邪術関連書の閲覧許可証を書こう。うちに来なさい。」
「やったぁ!」

『まさか“ケイフェース”を使ってくるとはな。知恵が回るものだ。……まったく。』
「ところでエドワード、自分の魔力は大丈夫なのか?」
「全ッ然 平気!だってそのぶん修行したもん。」
ジャクリアができないぶん、エドワードが修行をし、
その修行で得たぶんをジャクリアに分け与えたのだ。
『流石はエルリック兄弟、というところか。』
封筒に先ほどまでペンを走らせていた書類を入れるとエドワードにわたした。
「これが閲覧許可証だ。図書館で見せれば、閲覧できる。」
「サンキュ、大佐。」
「ありがとうございます、マスタングさん。」
ぶっきらぼうなエドワードと丁寧なアルフォンス。
「ありがとう、ロイさん!」
「あぁ。お姉さんによろしく。」

「よっしゃぁ!ファオンズに戻るぞ!」
「うん!」
元気よく飛び出す三人。
邪術関連書に、あの名前があるとは知らずに。

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2006年2月10日 UP