魔術師 対 邪術師 第7話−代償−
「兄さん!」
「エドワードさん!
「返事してよ兄さん!ねぇってばぁ!ウィンリィに、なんて言えばいいんだよぉ……?!」
「……エドが自分で望んだコトよ。…忘れないで。」
同刻、ロックベル家。
「……っ!」
「ウィンリィ?どうしたの?」
「あ、頭が…っ、………?あたし、此処で何やってるの?あれ?誕生日パーティーは?」
「記憶、戻ったの?!」
「記憶?なにが?」
封印されていた期間の記憶はなくなって、いつものウィンリィに戻った。
しかし、それは同時に『エドワードが命を落とした』という証明になるのだった。
「………お姉ちゃん、バカだよ……。」
「なにが?」
「自分から、これからの日々を放棄したんだよ?」
「なんの日々を?」
「ほら、そんなことも分かってない。
エドワードさんと過ごすこれからの日々を、自分から放棄したんだよ、お姉ちゃん。
自分を好きだって嫌いだって、好きな人といられるって、それだけで嬉しいものじゃないの?
だってお姉ちゃん、私とかといるより、エドワードさんといる方が笑顔だったもん。
これからのその日々を、お姉ちゃん、自分から放棄したんだよ?」
「………違うわ。違う………。そうよ、エドがそう望んだから……。」
「違くないよ、お姉ちゃん。自分から放棄したの。
自分で、これからのエドワードさんとの会話を、日々も、なにもかも。
……自分から、自分で奪った。ウィンリィさんからも………ね。」
「エドがそう望んだ………だから……。」
「いい加減目を覚ましてよ!まだ分からないの?
お姉ちゃんは、エドワードさんの命を奪っちゃったの!
それに口実付けて、自分を欺(こうとしてるだけじゃない!」
「……〜っ!」
さっきまで毅然(としていた態度とは一変、
跪いて自分と向き合い始めた。
「エドが、そう望んだから。そう、そうよね?だって、エドが……。
……違う。私は、自分から大切な者を、自分から捨てた……。」
「お姉ちゃん…………。」
しばらくの沈黙。
それを破ったのは、やはりウェルチアだった。
「いやああぁぁぁぁぁあああぁ!」
がっくりとうなだれ、黙り込む。
そして、もう冷たくなりかけたエドワードのそばによった。
「………ウェルチア?」
「どいて、アル。」
エドの隣に座り込むと、話を切りだした。
「………魔術にはない、邪術特有の術。………蘇生(術。」
「え?」
「代償は、術者の全て。………私の全てをかけて、…エドを甦らせる。」
「お姉ちゃん?!」
「言ったでしょう?邪術は全て人の命で清算される。……本当は、こういう意味だったのかもね。
魔術では真の幸せはつかめない。……本当だったわ………。」
「……………。」
「変わったわね、ジャクリア。私がいなくても、頑張るのよ。」
「お姉ちゃ「じゃぁね。アル、エドに。……伝えて。謝罪を。」
「…わかった。約束するよ。」
「ありがとう。……ジャクリア、離れてて。」
「………バイバイ。」
「……えぇ。さようなら。」
ジャクリアが離れたのを見届けると、ウェルチアは呟くように唱えた。
「“フィンケレル”。」
先刻の術同様、あたりがぱぁっと光った。
光が消えたとき、二人の目の前からはウェルチアが消えた。
エピローグ
「お前、逮捕されたんじゃなかったのかよ?!」
「るせぇ!脱獄してきた!」
「わざわざまたやられに来たのかよ!“アンディーラ”!」
天才魔術師、エドワード・エルリック。
それは今もなお健在で、国内の治安を守っている。
その弟、アルフォンスもまた、兄と活躍していた。
幼馴染、ウィンリィ・ロックベル。
彼女は今、魔力を高める修行にジャクリアと行っていた。
あの魔術の本は国立図書館からも消却され、
この世から「邪術」を使える者も廃(れたという。
魔術師 対 邪術師 完
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2006年3月7日 UP